「練習ではできるのに、本番で出せない」のはなぜ?

「道場ではちゃんとできるのに、試合になると急にできなくなる」。お子さんを見ていて、そう感じたことはありませんか。これは、決して気の緩みや努力不足ではありません。きちんとした理由があります。

スポーツ心理学では、この現象を「チョーキング」、日本語では昔から「あがり」と呼びます。普段、私たちは身につけた動作を「考えずに」行っています。自転車に乗るとき、いちいちペダルの漕ぎ方を考えないのと同じです。ところが強いプレッシャーがかかると、本来は無意識でできていた動作に「意識」が割り込んできます。「次はどう動くんだったか」「手の位置はこれで合っているか」――普段は気にもしないことが頭に押し寄せ、かえってぎこちなくなる。これが「あがり」の正体です。

さらに、不安は注意の向け先を狂わせます。本来は相手の動きに向けるべき集中が、「負けたらどうしよう」という心の中の不安に奪われてしまう。結果、相手がよく見えなくなり、判断が遅れ、技も雑になります。

大切なのは、これは能力が低いから起きるのではない、ということです。むしろ、しっかり力をつけた子ほど起こりやすい。力があるからこそ、それを出せないことに苦しむのです。お子さんが本番でうまくいかなくても、どうか「実力がない」と思わないであげてください。

そして朗報があります。本番で力を出す力――私たちはこれを「発揮率」と呼びます――は、稽古で鍛えられます。龍成塾の稽古で技を出すときに入れる「気合」は、その代表です。気合は気持ちの問題だけではありません。大きく声を出すことで、緊張で浅くなった呼吸をリセットし、未来の不安や過去の失敗から、注意を目の前の一手に強制的に引き戻す働きがあります。普段の稽古で気合を習慣にしておくからこそ、本番でも自然に発動するのです。呼気を長くする呼吸法や、頭の中で動作を思い描くイメージトレーニングも有効です。「精神力を鍛えろ」と言うだけでは何をすればいいか分かりませんが、やるべきことは、こうして具体的にあるのです。

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